復帰摂理歴史の真実
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■ 第三章 第一節 ザカリヤ、マリアとヨセフ
     a. イエスの誕生の秘密 (上)

1. 「聖家族の秘密」(Secrets of the Holy Family)

 (1) 妾の子イエス

  @ イエスの誕生の秘密

   a) ルカによる福音書第1章における出来事

 「聖家族の秘密」(Secrets of the Holy Family) マーク・ギブス(Mark Gibbs)著

 英国の作家マーク・ギブス氏は、メシア・コードを事実に基づいて実証するものではない。そのような証拠は存在しないが、ユダヤ人の伝統に基づき、理性と論理から考えていくと指摘し、イエスが聖母マリアの処女懐胎によって生まれたのではなく、祭司ザカリアとマリアとの間に生まれた子供だったと主張します。
 さらに、キリスト教会でいわれてきた聖母マリアの処女懐胎は後日、イエスの神性を強調するために作成されたものと主張しています。マーク・ギブス氏は、新約聖書「ルカによる福音書」を中心に、イエスがどこでどのようにして生まれたかを冷静な筆運びで記述しています。そして、イエスの誕生の経緯は当時、多くのユダヤ人たちが知っていたとしています。そのため、イエスは苦労し、ザカリヤ家庭の失敗がイエスに十字架の道を強いる結果となったとしています。言い換えれば、イエスは十字架で処刑されるためにきたのではなく、この地上に神の世界を構築するためにきたこと、イエスの十字架は神の予定ではなかったこと等が明らかであるとしました。
 また、マーク・ギブス氏は旧約聖書に登場する信仰の祖「アブラハム家庭」と「ザカリア家庭」を比較しました。アブラハムには本妻サラの他に、召使のハガルがいました。ザカリアの家庭には本妻エリザベツと、ヨセフの妻となるべきマリアそれぞれ3人が登場します。アブラハムの第一子はサラとの間のイサクであり、第二子はハガルとの間のイシマエルです。同じ様に、ザカリアの第一子はエリザベツとの間に生まれた洗礼ヨハネであり、第二子はマリアとの間に生まれたイエス、という構図です。これらのことから、ザカリア家庭が重要な使命をもっていたことが分かるとしています。
 さらに、ギブス氏はその主張を聖書の中からだけではなく、中世のイタリア人画家パルミジャニーノ(1503年〜1540年)の「聖家族」(右図)など宗教画を例に挙げ、「ザカリアとマリアの関係」を解説しています。そして、神が人類の救い主を「妾」の血統をひく家系から誕生させた事情などについて、キブス氏の著書はこれまで封印されてきた内容を読者に提示しています。

<参照>
 イエスの父親はザカリアだった
 “クリスマス”って「何の日」? --- 長谷川 良
 イエスの系図と生誕の謎
 キリストの「暗号」解明
 イエス様の父親はザカリヤ説その2
 イエス・キリストの父は聖霊か?それとも人間か?<前編>



   b) 神にみまえに正しい人、アビヤの組の祭司とその妻

 ユダヤの王ヘロデの世に、アビヤの組の祭司で名をザカリヤという者がいた。その妻はアロン家の娘のひとりで、名をエリサベツといった。ふたりとも神のみまえに正しい人であって、主の戒めと定めとを、みな落度なく行っていた。ところが、エリサベツは不妊の女であったため、彼らには子がなく、そしてふたりともすでに年老いていた。(ルカによる福音書1章5節〜7節)


 “アビヤ組” の名前の由来になったアビアタルは、ノブの祭司アヒメレクの息子です。ダビデを助けたという理由でサウルはアヒメレク一族を虐殺しました。その時にアビアタルが一人逃れて、ケイラの所にいたダビデの所に身を寄せたのです。後にダビデ王の祭司となり、ダビデのために神意を伺いました。ダビデがエルサレムでイスラエルの王になった時には、王に従い、契約の箱をエルサレムに運び入れた人物だったのです。
 ルカによる福音書では、ザカリヤとエリサベツは “神の御前に正しい人で、戒めを守っていた人” と紹介しています。@ これは、律法を完全に行ったことで正しいということではなく、誠実で裏表のない良心的な、神に対して忠実な人でした。しかし、エリサベツは不妊の女で、子供がいなかったのです。イスラエルでは神から祝福された人は繁栄すると考えられていました。ですから彼女が子供を授かった時に、「わたしの恥を取り除いてくださった」と言ったのは、そのことによって苦悩したことを物語っています。

<参照>
 イエスの誕生時期特定の根拠について修正
 聖書人物伝:新約 1 ザカリヤ&エリサベツ

   c) 夫ザカリヤは唖になり、不妊の妻エリサベツに子供授かる

 そこで御使が彼に言った、「恐れるな、ザカリヤよ、あなたの祈が聞きいれられたのだ。あなたの妻エリサベツは男の子を産むであろう。その子をヨハネと名づけなさい。彼はあなたに喜びと楽しみとをもたらし、多くの人々もその誕生を喜ぶであろう。彼は主のみまえに大いなる者となり、ぶどう酒や強い酒をいっさい飲まず、母の胎内にいる時からすでに聖霊に満たされており、そして、イスラエルの多くの子らを、主なる彼らの神に立ち帰らせるであろう。彼はエリヤの霊と力とをもって、みまえに先立って行き、父の心を子に向けさせ、逆らう者に義人の思いを持たせて、整えられた民を主に備えるであろう」。するとザカリヤは御使に言った、「どうしてそんな事が、わたしにわかるでしょうか。わたしは老人ですし、妻も年をとっています」。御使が答えて言った、「わたしは神のみまえに立つガブリエルであって、この喜ばしい知らせをあなたに語り伝えるために、つかわされたものである。時が来れば成就するわたしの言葉を信じなかったから、あなたはおしになり、この事の起こる日まで、ものが言えなくなる」。民衆はザカリヤを待っていたので、彼が聖所内で暇どっているのを不思議に思っていた。ついに彼は出てきたが、物が言えなかったので、人々は彼が聖所内でまぼろしを見たのだと悟った。彼は彼らに合図をするだけで、引きつづき、おしのままでいた。それから務の期日が終ったので、家に帰った。
 そののち、妻エリサベツはみごもり、五か月のあいだ引きこもっていたが、「主は、今わたしを心にかけてくださって、人々の間からわたしの恥を取り除くために、こうしてくださいました」と言った。(ルカによる福音書第1章13節〜25節)


 ザカリヤはエルサレム神殿に仕えるアビヤ組の祭司でした。神殿の祭司は30歳から50歳のレビ人だけがなることができました。祭司は24の組に別れ、神殿の様々な仕事を、順番に受け持っていました。アビヤ組は第8班。神殿の仕事は年に2回、1週間ずつまわってきました。その祭司の中でもザカリヤは、地位が低かったと言われています。香を焚くのは年に2回ですから、くじに当たってザカリヤが香を焚くことになったのは、一生に一度あるかどうかの名誉なことだったのです。
 ザカリヤが聖所に入って香を焚いている間、天使ガブリエルが香壇の右に現れ、ザカリヤは恐怖の念に駆られました(ザカリヤは人としては立派でしたが、祭司として好い加減だったことの現れです : 青下線@ )。天使はザカリヤに、妻エリサベツが男の子を産むことを告げたのですが、ザカリヤはこのことに不信を抱き唖(おし)になってしまうのです。
 ザカリヤはこの時からヨハネが誕生するまでの間、声は出せても話ができず、会話ができませんでした。この唖となっている間のザカリヤの立場が、特に重要だったのです。ザカリヤは、妻エリサベツに対して一切話ができず、エリサベツに従うしかありませんでしたが、姪であるマリヤにとって、たとえ話せないとしても尊敬する伯父でした。詳細は次のページで述べますが、そのようなザカリヤの立場の違いが、ヨハネとイエスの誕生の違いを分けたのです。

   d) 主の端女、処女マリヤ

 6か月目に、御使ガブリエルが、神からつかわされて、ナザレというガリラヤの町の一処女のもとにきた。この処女はダビデ家の出であるヨセフという人のいいなづけになっていて、名をマリヤといった。御使がマリヤのところにきて言った、「恵まれた女よ、おめでとう、主があなたと共におられます」。この言葉にマリヤはひどく胸騒ぎがして、このあいさつはなんの事であろうかと、思いめぐらしていた。すると御使が言った、「恐れるな、マリヤよ、あなたは神から恵みをいただいているのです。見よ、あなたはみごもって男の子を産むでしょう。その子をイエスと名づけなさい。彼は大いなる者となり、いと高き者の子と、となえられるでしょう。そして、主なる神は彼に父ダビデの王座をお与えになり、彼はとこしえにヤコブの家を支配し、その支配は限りなく続くでしょう」。そこでマリヤは御使に言った、「どうして、そんな事があり得ましょうか。わたしにはまだ夫がありませんのに」。御使が答えて言った、「聖霊があなたに臨み、いと高き者の力があなたをおおうでしょう。それゆえに、生れ出る子は聖なるものであり、神の子と、となえられるでしょう。あなたの親族エリサベツも老年ながら子を宿しています。不妊の女といわれていたのに、はや6か月になっています。神には、なんでもできないことはありません」。そこでマリヤが言った、「わたしは主のはしためです。お言葉どおりこの身に成りますように」。そして御使は彼女から離れて行った。(ルカによる福音書1章26節〜38節)


 エリサベツは身篭ってから5ヶ月間引篭もり、6ヶ月目に入ってのことです。エリサベツが「わたしの恥を取り除いてくださった」と言った後、処女であるマリアのところに、神から遣わされた天使ガブリエルが現れて語った言葉に対して、なぜマリヤは “胸騒ぎ” がして、何に“思いを巡らしていた”のでしょうか。不妊の女だったエリサベツと、未婚の処女マリヤ。これは、エリサベツからマリヤに、ザカリヤの家に来るように連絡が来ていたと考えると、なぜ胸騒ぎがして何に思いを巡らしたのか、また天使ガブリエルが話を終えた後、マリヤは「わたしは主のはしためです。お言葉どおりこの身に成りますように」と覚悟を決め、なぜ “大急ぎで” ユダの町にあるザカリヤの家に行ったのかが理解できることでしょう。

   e) 伯母エリサベツと姪マリヤ

 そのころ、マリヤは立って、大急ぎで山里へむかいユダの町に行き、ザカリヤの家にはいってエリサベツにあいさつしたエリサベツがマリヤのあいさつを聞いたとき、その子が胎内でおどった。エリサベツは聖霊に満たされ、声高く叫んで言った、「あなたは女の中で祝福されたかた、あなたの胎の実も祝福されています。主の母上がわたしのところにきてくださるとは、なんという光栄でしょう。ごらんなさい。あなたのあいさつの声がわたしの耳にはいったとき、子供が胎内で喜びおどりました。主のお語りになったことが必ず成就すると信じた女は、なんとさいわいなことでしょう」。
 ― 中略 ―
 マリヤは、エリサベツのところに三か月ほど滞在してから、家に帰った。(ルカによる福音書1章39節〜36節)


 さて、エリサベツとマリヤは、親戚関係でした。エリサベツは、マリヤを家に招き入れて、マリヤの挨拶を聞くや否や胎内の子が喜び踊ったのです。それは胎児より先にエリサベツ自身が喜んだので胎児も喜んだといえます。さらに、エリサベツは、“マリヤが主の母上となる” ことを知っていました。エリサベツも天使ガブリエルからマリヤのことは聞かされていて、その上でマリヤを自宅に呼んだことになります。エリサベツは、“信じ難いことを信じて来てくれた” マリヤを「主のお語りになったことが必ず成就すると信じた女」と言って、聖霊に満たされながら“異言”を語り始めたのです(ルカによる福音書1章46節〜55節)。
 マリヤはエリサベツのところに “3ヶ月ほど滞在” してから、自分の家に帰ったとあります。なぜ3ヶ月ほどもの長い間滞在していたのでしょうか。妊娠した妊婦は3ヶ月ほどすると、胸がふくらんだり、お腹が大きくなったりと母体に様々な変化が生じます。つまり、マリヤの体に“妊娠による変化が表れ始めた”ので、エリサベツはそれを確認してマリヤを家に帰したと言えます。つまり、マリヤはエリサベツの家に来て、エリサベツの夫ザカリヤと関係して身篭ったことになります。しかも、マリヤをザカリヤの所に招いたのは、エリサベツでした

<参照>
 【妊娠3ヶ月】胎児と母体の症状で知っておきたいこと

   f) ヨハネの誕生と唖からの解放

 さて、エリサベツは月が満ちて、男の子を産んだ。近所の人々や親族は、主が大きなあわれみを彼女におかけになったことを聞いて、共どもに喜んだ。八日目になったので、幼な子に割礼をするために人々がきて、父の名にちなんでザカリヤという名にしようとした。ところが、母親は、「いいえ、ヨハネという名にしなくてはいけません」と言った。人々は、「あなたの親族の中には、そういう名のついた者は、ひとりもいません」と彼女に言った。そして父親に、どんな名にしたいのですかと、合図で尋ねた。ザカリヤは書板を持ってこさせて、それに「その名はヨハネ」と書いたので、みんなの者は不思議に思った。すると、立ちどころにザカリヤの口が開けて舌がゆるみ、語り出して神をほめたたえた。(ルカによる福音書1章57節〜64節)


 さて、エリサベツは月が満ちて男の子を産み、名前をつけようとした時、エリサベツは「 “ヨハネ” という名にしなくてはいけません」と言ったので、辺りの者は皆不思議に思いました。そこで、祭司である夫ザカリヤが “唖” であったため、書き板に「その名は “ヨハネ” 」と記しました。
 神の言葉を不信して “唖” となったザカリヤは、成されるがままに成して行く中で、天使ガブリエルの言った神の言葉を確信し、その証しとして書き板にその様に記したのです。そしてザカリヤは、口が利けるようになって次のように語ったのです。

幼子よ、あなたは、いと高き者の預言者と呼ばれるであろう。
主のみまえに先立って行き、その道を備え、罪のゆるしによる救いをその民に知らせるのであるから。
これはわたしたちの神のあわれみ深いみこころによる。(ルカによる福音書1章76節〜78節)


 ザカリヤは、我が子 “ヨハネがメシヤを迎えるために備えをする者となる” ことを予言して、神を褒め称えたのです。

  A 庶子として生まれたイエスは結婚できない

 三日目にガリラヤのカナに婚礼があって、イエスの母がそこにいた。イエスも弟子たちも、その婚礼に招かれた。ぶどう酒がなくなったので、母はイエスに言った、「ぶどう酒がなくなってしまいました」。イエスは母に言われた、「婦人よ、あなたは、わたしと、なんの係わりがありますか。わたしの時は、まだきていません」。(ヨハネによる福音書2章1節〜4節)


 当時のユダヤ社会には、“私生児は正式には婚姻できない” という律法がありました。イエスは、祭司ザカリアとマリアとの間に生まれた庶子であることが知られていたため、イエスが正式には婚姻できなかったという事実があります。「庶子」とは、本妻以外の女性から生まれた子(妾の産んだ子)のことです。
 ヨハネによる福音書2章4節で、イエスが母マリヤに「わたしの時は、まだきていません」と言ったとき、マリヤは “” を “ぶどう酒” に聞き間違えた振りをしたのです。ところがイエスは、「ぶどう酒」は “人生の楽しみや喜び” を象徴していたことから、わたしの(人生の喜びとしての結婚の)」を喩えて言ったのです。

<参照>
 イエスが結婚できなかった理由
 ヤコブの母リベカと妻レア
 「喜び」をもたらす新しいぶどう酒


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